遠視
良く見える人や眼の良い人のことを遠視と呼んでいる場合が多くありますが、それは大きな間違いです。
良く見える人、または良く見えていなくても、眼の奥にピントがきちんと合う眼のことを正視と呼び、良く見えているからといっても、 ピント調節をしていない状態にすると遠くも近くもボケて見える眼のことを遠視といい、遠くの景色を見ようとしても眼を凝らさないとはっきり見ることができません。
通常生まれたばかりの赤ちゃんの眼は、屈折度数は正視と同じでも網膜に光が当たったことがありませんから、ものをはっきり見ることはできませんが、 眼を開けたことで網膜に焦点のあった光が当ることにより、網膜の視細胞は加速度的に発達していくと考えられます。
この時に強度の遠視の状態ですと、網膜に鮮明な映像が映らないので脳がものを正確に認識することが困難となる場合があります。
特に人間の眼には優位性がありますので、片眼だけに強度の遠視がある場合や両方とも強度の遠視の場合、少しでも鮮明な映像だけを脳が認識してしまうことがあり、 その結果、鮮明な映像を映していないほうの眼の網膜から脳までが、使っている方の眼に比べて発達不足となり、ものを見る力が弱くなってしまい弱視の原因になることがあります。
この事から脳は生まれつき眼を使ってものを見ているのではなく、眼を使うことによって脳が発達していると考えられます。
従って乳幼児の左右差のある遠視と中等度以上の遠視は、眼と脳の発達のために少しでも早い発見と最適な矯正が必要です。
また、視力に問題のないと思われる遠視の幼児や子供といえども、 ものを見る時に毛様体筋(水晶体を支える筋肉)の調節力と内直筋(眼球を動かす筋肉)の収縮力を必要以上に使わなければならないため、 正視の人の数倍も働かなければならず、疲れやすい眼であることを理解してください。調節力が充分に余裕のある10代や20代では、弱度の遠視の人は眼精疲労を訴えることは少ないですが、調節力が低下してくる30代になると疲れを訴える人が増えてくるようです。
これは遠視も正視と同じように眼球運動が豊富なのですが、遠視の場合は調節力を使いすぎるために筋肉疲労が起こりやすくなる場合もありますので、 眼筋の柔軟性を維持することが遠視の疲労を減らすことにつながりますし、適切なメガネやコンタクトの使用も疲労軽減に有効と考えられます。